ただ、ボラを愛でたくて。BL感想日記

ただ、ボラを愛でたくて。BL感想日記

ミーハーとマイナー上等。ニアもブロマンスもニオイ系も好き。読んだBL感想をネタバレなしでレビューします。

アリスのためならどこまでも。ブロマンス感漂う本格ミステリ「スウェーデン館の謎」(有栖川有栖)

不意打ちでブロマンス砲をくらった気分だ。有栖川有栖の「スウェーデン館の謎」。かの臨床犯罪学者・火村英生と、作家で助手の有栖川有栖ことアリス(♂)が活躍する本格ミステリー長編である。

 

うんと昔から「火アリ」という界隈がアツいのは知っていたけれど、…いやあ、火村ぜったいに好きだろ、アリスのこと!!!?

 

スウェーデン館の謎」は、小説の取材のために、ひとりで福島の裏磐梯(うらばんだい)を訪ねていたアリスが殺人事件に巻き込まれ、光の速さで駆け付けた火村がみごと真犯人を突き止めるストーリー。犯行時に積もっていた雪に犯人と思しき足跡が残っていないという不可解な密室トリックに挑む超本格ミステリーだ。

 

火村は犯罪を確固として許さない、というか、殺人を犯したのに逃げようとする相手に容赦がない。神様なんて信じやしないから、自分の力が及ぶ範囲でそんなやつらを叩き落としてやる、という信念の持ち主である。

 

そんな火村が今回、真犯人を前にとんでもないことを言った。ネタバレを避けるために搔い摘むと、愛する人のためなら、自分は犯罪を厭わないだろう、と断言したのだ。

 

私が驚くほど、火村はきっぱりと断言した。まるでそう語る彼の脳裏に、彼が全存在と引き換えにしてもいいと念じる具体的な誰かの顔を思い浮かべているかのようだった。

 

愛する者を守るためなら、自分は何だってやる。我がおつむは、ねぇそれってアリスのこと? もしかして、いや、もしかしなくてもアリスのこと? とやかましい。だって不安そうなアリスの「きてくれ。嫌な予感がする」という電話1本でぶっ飛んでくるんだぜ? 単純なおつむでよかった(わたしが)。

 

一方で、アリスはアリスで犯罪捜査にのめり込む火村の身をこっそりと案じている。

 

――俺も人を殺したいと思ったことがあるから。
 彼が犯罪と格闘する動機を説明する時によく用いる言葉だ。それに何も加えようとはしない。だから、私からは問うまい、と思っている。問わずに、心身とも強靭そうでいてどこか危うげなこの男がいよいよバランスを崩しそうな時に、――そんな瞬間が訪れないことを祈るが――救いの手を差し伸べてやれたら、などと思うこともある。

 

…っかー! この控えめな感じがいいよね。まとめると、お互いがお互いをめっちゃ好きなんだけど、自分の片思いだと思い込んでいるみたいな。相手の平穏をそっと陰から見守れたら自分は満足、みたいな。

 

決して踏み込もうとはしない。けど、相手のことをどこまでも想っている、みたいな関係がたまらなく好き。ええ、妄想ですけど。ブロマンス好きにはたまりません。

 

余談だが、巻末の宮部みゆきセンセの解説によると、「火村は女嫌い」だそうだ。ふぅどこまでも期待させやがる。このふたりが探偵&助手としてコンビを組んでいるだけで尊いので、これからも心してシリーズ全編拝んでいきたい。